四大発明によってチョコレートが大きく進化し、現代のようなチョコレートのように。
19世紀は、ヨーロッパで「四大発明」と呼ばれている技術革新が起こり、近代チョコレートの基礎ができあがる時代です。
この頃に誕生したチョコレート会社の中には、現在まで存続して世界的に有名になっている企業も多くあります。
産業革命にまたがるこの時代には、人手に代わり、水力を利用した産業機械が開発されました。
家内工業的なチョコレート製造から、動力による生産へと大きく進歩したのです。
<四大発明>
1. クンラート・バンホーテンによるココアの発明(1828年)
それまでの飲みにくかったチョコレートを飲みやすくするため、オランダのクンラート・バンホーテンがカカオ豆を搾ってココアバターを抽出する圧搾機を開発しました。
バンホーテンは、バンホーテン社の創始者です。
この圧搾機を用いることで、カカオ豆に50%以上含まれていたココアバターを28%程度までに減らすことに成功しました。
搾り取って残った固形分を粉末状にしたものがココアパウダーです。
ココアパウダーは油脂が少ないため、お湯と混ざりやすくなりました。
この搾油の過程で副産物としてココアバターが抽出されたことによって、固形のチョコレート開発のきっかけにもなりました。
また、アルカリ処理で酸味や渋味の強かったチョコレート飲料を中和することによって、風味がまろやかになりました。
2. ジョセフ・フライによる食べるチョコレートの発明 (1847年)
イギリスの菓子職人ジョセフ・フライが固形チョコレートを発明しました。
それまでは「飲むチョコレート」でしたが、「食べるチョコレート」が誕生でした。
当時のチョコレートは、ココアパウダーと砂糖をお湯に溶かした飲料でした。
ジョセフ・フライは、カカオ豆と砂糖をすり潰し、お湯の代わりにココア製造の副産物であるココアバターを加えました。
するとチョコレートは冷やすと固体になり、口に含むと体温で溶ける固形のチョコレートができました。
3. ダニエル・ピーターによるミルクチョコレートの開発(1875年)
スイス人のダニエル・ペーターが粉乳を使い、ミルクチョコレートを生み出しました。
ダニエル・ペーターは、スイスに初めてチョコレート工場を作った人物です。
チョコレートは油分が多く、水分の多いミルクを添加するとココアバターとなじみが悪かったため、ミルクの水分を取り除く必要がありました。
そこで考案されたのが、濃縮ミルクを混ぜたものを、水力を利用した機械でかき混ぜてから、冷やし固めるという製造法でした。
ミルクチョコレートの発明により、チョコレートの味はマイルドになり、現代のチョコレートに大きく近づきました。
4. ルドルフ・リンツによるコンチェの発明(1879年)
スイスのロドルフ・リンツがコンチング(精錬)の製法を考案しました。
ココア、食べるチョコレート、ミルクチョコレートの発明を経た時には、まだざらつきのある口当たりだったチョコレートでしたが、コンチェの発明によって、なめらかなくちどけのチョコレートになりました。
コンチェは、チョコレートを製造する際にココアバターを均一に行きわたらせる作業(コンチング)をするための撹拌機のことです。
コンチェという言葉はスペイン語で貝のことで、リンツが使用した容器がコンチ貝の殻に似ていることから名づけられました。
リンツはメソアメリカでカカオやトウモロコシをすり潰すために使われていた原理を応用しました。
容器にチョコレートを入れ、石のロールを転がしてチョコレートの中のカカオや砂糖をより細かい粒子になるまで砕くという処理を行うと、チョコレートはなめらかな食感になりました。
コンチング(精錬)は、現在においてもチョコレート製造に欠かせない工程です。